テムズの挑戦(マジカル編)
ここは、マジカル☆ワールド。純粋化された善と悪の共存する世界。
「疾風の翼ッ!」
ゴゴゥ――
「バチバチ☆サンダーぁ♪」
ジビジビジビィ――
多くの悪意とマジカル☆ガール達の中、目立った戦績を上げる二人のマジカル☆ガール。
――そして、もう一人。
テムズ :重・撃・無・皇ォォ……って、――ねえ。フォートル。
フォートル:なんだ、マジカル☆ガール? 藪から棒だな。ところで藪から棒だが藪から棒が出てくることがどうして藪から棒になるのだろうな。
テムズ :知らないわよ、そんなこと……。ねえ、フォートル。私にはヘレナ達みたいな飛び道具は無いの?
フォートル:ふむ、飛び道具?(悪意を一撃で屠ったテムズのハルバードを眺めながら)
テムズ :ほら、やっぱり私って“か弱き乙女(?)”じゃない? あまつさえ看板娘だったりもするわけだし、生傷とか作っちゃうとイロイロ困るわけよ。
フォートル:……君には肉“弾”がお似合いだと思うのだが。――良いじゃないか。そのまま無敵な看板娘の地位に座せばいいた、痛いっ。踏むんじゃない、そして徐々に地味に体重をかけるんじゃないマジカル☆ガールっ!
テムズ :とにかくよ、在るのか無いのか素直に答えなさい(足を上げながら)。
フォートル:(溜息)……まったく、その体重でのしかかった一撃なら粉砕できぬものなどないといいいいいいえなんでもありませんいやありますよはいあります、あらせて頂きますとも。
テムズ :あまり難しいのはゴメンだからね。
フォートル:ダイジョォーブ。今なら煩わしい呪文も練習も無し、ちょっとした手振りと呪文だけで発動しちゃう! いやあシャチョさん運がいい!(揉み手)憎いねコノ☆(耳を曲げて肘鉄のように小突く)
テムズ :……その話し方、やめて。で、どうするの?(少々期待に胸を膨らませて)
フォートル:うむ(何事も無かったかの如く)。まず、両手の平を片方ずつ前に出し、それから裏返す。
テムズ :こう?
フォートル:そしてその手を包むように交差してから一気に前へと解き放つ。
テムズ :へぇ結構簡単ね。(真似しながら)
フォートル:まだだ、この動作をテンポ良く行いながら呪文を唱える。
テムズ :何て唱えるの?(手を掲げたポーズで)
フォートル:A CHI CHI A
CHIだ。
テムズ :? どういう意味それ
フォートル:わからん。なにしろ、イーストエンドの高名な言霊使いが編み出した秘法だからな。
おそらくは東洋語なのだろうが――っと、話の途中だが出番だ、マジカル☆ガール
テムズ :って、またいきなりね。
フォートル:都合だ。これでも大分削除したんだぞ。
テムズ :何の話よ……で、あれ何? お釜の化け物?
フォートル:本日の悪意は“卵の賞味期限ちょっと過ぎてるけどまだいけるよね? でも私は食べないでおこっと(はぁと)”とか考えている新妻の悪意だ
テムズ :新妻……それって悪意?
フォートル:何を言う。悪意としては可愛いものだが、被害の規模は一級悪意にも劣らないと言う、ある意味危険な存在なのだぞ。
さあ、一気にやってしまえマジカル☆ガール。
テムズ :はいはい……そうね。じゃ、折角だから――
と、テムズが自然体に構える。
隙の無い――どちらにでも動け、どの方向にも緊張と緩和を行える体術の理想型だ。
体内から徐々に、だが確実に輝きを増して緋色のオーラが沸き起こる。
フォートル:おお、まさしくそれは善なる心バーニング☆ハート!
テムズ :黙って! 集中できない……。
フォートル:かませ! マジカル☆ガール!!
テムズ :あああぁ――A CHI
CHI A CHI!!!
――瞬間。
情熱のビートとサンバのリズムと共に解き放ったテムズの手の平に力が集う。
荒れ狂う太陽の力がテムズの体内をうねり、駆け巡り、そして、
ポフッ――〜〜☆
と、黒煙を上げて暴発した。
ザン――
テムズに100のダメージ。
煤だらけの髪と服は一週間は洗っても落ちきらないこと請け合いだっ!
ヒュラリン♪――
悪意に0ダメージ。悪意は攻撃を避けた。
悪意は訳も解からずまごまごしているっ!
無常の間が過ぎる。揺れ動くのはウサギの耳だけ。
テムズ :――――(ゲフッと煙を吐いてから、押し殺した声で)今のがそうなの?
フォートル:……むう、おかしいぞ。本来なら2億4千万℃の視線のレーザービームが敵を貫くのだが。
テムズ :へえ……。けどそれって私までケシズミになってない?(やたら平坦な声)
フォートル:瞳の奥に野蛮な太陽を召喚する術だからな。只の人間ごときに持ち堪えられるはずも無かろう
テムズ :(底冷えするような声で)じゃあ、成功してたら危なかったわけね?
フォートル:そうでもない。人には肉体を破壊する行為を無意識にセーブする機能が在る為、自らを滅ぼすような魔法を使えるはずも無い――
なるほど、不発の理由はそれか(ポンと肉球を叩く)
テムズ :人間の体ってすばらしいわねぇ。
フォートル:ああ、特に君の場合生まれ持った天性の暴力性とマッチして、マジカル☆ワールドにもかかわず精神より肉体の素質が極限にまで開花され――
おや、マジカル☆ガール。なぜハルバードの矛先を私に向ける。しかもなぜ襟に刺してぶら下げる。あまつさえなぜそのまま大きく捻転して肩越しに振りかぶるとはいかなる所存だ?
テムズ :飛び道具って何も魔法だけの専売特許じゃないわよねぇ。ジャベリンとか
フォートル:念のために言っておくが、君が今手にしているのはハルバードだ。槍でしかも斧でもある破砕武器だ。
テムズ :ええ、つまりト・マ・ホ・オ・クよね?
フォートル:いや、ハ・ル・バ・ア・ドなのだが……(黒い毛皮に汗が滲む)
テムズ :あっそう。ハル“バード(鳥)”なのね。ジャベリンでトマホークで、しかもバードだなんて良く飛びそうじゃない
フォートル:いや、あの聞いて、お願いしますから(泣)
テムズ :聞・く・耳・持・つ・か・ぁ〜〜〜〜〜っ!!!
――ドゴッ――――ヒューン――……・・
+ キラン
と、黒ウサギ一匹をぶら提げたトマホークジャベリンが、
0,1ミリ秒で悪意を貫き、
星の彼方へと消え去った。
(めでたし)
+オマケ+
フォートル:こっ、今度は大丈夫だマジカル☆ガール。今度の魔法はその名も『ギンギラギンにさりげなく天使のような悪魔の一撃』
これを喰らえばどんな悪意であろうと天国へと一直線に――
テムズ :あんたが行きなさぁああいい!!(叫びと共にフライパンの景気のいい音)
投稿者 しゃんぐさん
投稿日 2003年12月5日(金)19:59
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