大江戸版エントラ

 

 最初の3つは「辺境紳士社交場」BBSより転載させていただきました。江戸情緒豊かな人情編(?)。これらの投稿直後にギャラリーに公開されたのが、「大江戸縁虎人情草子」のイラストでした。
 4つめは、モパ虫の掲示板に投稿されたものです。これでなんとなく「第一話完」という感じにまとまりましたね。二話以降はあるのでしょうか?

 


…ここは、お江戸の城下町。町のはずれにひとつポツンと店がある。
「はぐれ処 辺境」 騒がしい城下町の中で、ひと時の静穏がある店。
 店員は三人。おてむ・おさり・越そん。 
 
 今日も静かな昼下がり、いつもの如く客は来ない。いつもの如く暇を持て余す三人。と、そこに。
 「号外!! 号外!!」
 「! 事件でござる!! 行きますよ! 越そん!!」
 おさりがすぐさま反応する。大泥棒がこの辺りに出たらしかった。
  ヒューン
 「アイツが泥棒でござる!」 「まかせろっ」
 越そんが店の小銭を取り出す。そして、それを十米離れているであろう、泥棒に投げつける。
 カ―――ン
 泥棒の何も入って無いかのような頭に命中。哀れ御用となりました。
「大捕り物でござる!!」
 喜びもつかぬま、背後に凄まじい殺気を感じ二人は振り向く。
 「あ、あんたたち〜 店のお金を勝手に投げるなって何度言ったら分かるの!!!! これはツケにしとくわよ」
 
 ここは「はぐれ処 辺境」騒がしい城下町の中で、ひとときの静穏がある店。
 「スリだーー!!!!」
 「じ、事件でござる!!」

投稿者 /ハレルヤさん
投稿日/ 2003/07/07(Mon) 02:48:55

 
今日も今日とて天下泰平。(べべん♪)
 ここは、城下外れのトンテケ鍛冶屋。
 しばしも休まず槌打つ響き、飛び散る火花よ走る湯玉とくらぁ。
「おや、越そんさん。毎度」
 ふいごの風さえ息をもつかず、仕事に精出す村の鍛冶屋若い鍛冶屋。彼は若いながらもこの町一番の刀鍛冶だ。
「よう、無礼蒸。精が出てるな。おてむがよろしくいってたぞ。良く切れる包丁をありがとうだとさ」
「そうですか! いやあ……へへ、うれしいなあ」
 ちなみにこいつは「はぐれ処 辺境」 のおてむに一目惚れして「天女の君」 と呼んではすっかり熱を上げている。
「で、越そんさん。今日は何の用向きで?」
「ああ、悪いがこれを打ち直してくれ」
「……越そんさん、ウチは貨幣の偽造はやってませんよ」

投稿者/ しゃんぐさん
投稿日/ 2003/07/07(Mon) 03:57:43

 
 天下天下と拝めども、人の中には闇もあり。
 天道様にも見通せぬ、月夜が翳る宵の過ぎ――(かかんっ)

「善哉善哉、団子がうまいでござる。やや越そん、あそこに見えるはさらなる夜盗! 行くでござるよ!」
「なあ、おさりよ。そろそろ足癖の悪い赤待の旦那に任せてはどうだと思うのだが」
「それは隠密探偵の矜持にもとるでござるッ! みなさい越そん、足癖の悪い赤待同心が赤い夜盗のほうきにしばかれて――あ、あー!?」
「や……奴は!」
 払われる黒雲。ざあっと降り注いだ月光の下に浮かぶその姿は!

投稿者/ 辺境紳士さん
投稿日/ 2003/07/07(Mon) 13:27:42

 
 二人の姿が月光の下に浮かんだが、逆光によって顔はよく見えなかった。

「あいや待たれい」
 おさりが立ちはだかる。
「確かに今の世は住みにくい。
 しかしこんな事をして捕まったら、国のおっかさんが泣いてしまうでござるよ」
 その声を聞いて逃げようとしていた夜盗は足を止めた。
(むむ、説得が効いているのでござるな。よしもうひと押し)
「ここはひとつ考え直してみるのは、いかがでござるか?
 なぁに、後の事はこの隠密探偵おさりに任せればいいでござるよ」
「……」
「あ、待つでござる!」
 夜盗はおさりを振りきり、漆黒の京の町に消えていった。


 翌朝、おてむは寝不足顔で食卓に出てきた。
「お疲れさん」
 朝の挨拶もさておき、越そんが声をかける。
「な、何が?」
 しどろもどろにおてむは返事をした。
「あれはこの町の悪代官が皆から搾り取った物だろ?」
 おてむはハッと顔を上げた。
「悪いのは代官だが、お前さんが相手じゃ同情したくもなるな」
 おてむの肩をポンと叩いて、越そんは店の前に出た。
「……すべてお見通し、ってわけね」
「あぁ」
「じゃあツケの方も当然何とかしてるわよね」
「いやそれとコレとは話が別じゃ――」

 今日こそはお客さんがたくさん来て欲しいな。
 空に舞う越そんを見ながら、おてむはほうきで店の前を掃き始めた。

投稿者:ハレルヤさん 
投稿日:2003/10/14(Tue) 03:40

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